キャリア&就職支援ジャーナル_第70号
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山崎徹教諭進路指導部長(北海道)学校基本調査(確定値)北海道北海道霧多布霧多布高等学校高等学校 「英知」「錬磨」「創造」を校訓に掲げる北海道霧多布高等学校(北海道厚岸郡浜中町、柴尾尚文校長)。浜中町の教育理念である「ふるさと浜中に生き、豊かなまちを拓き創造する人づくり」の実現に向けて教育活動に注力している。進路指導を主導する進路指導部長・山崎徹教諭にお話をうかがった。●地域理解を深める独自視点北海道霧多布高等学校はる人づくりのために、社会人としての基礎を培い、地域の課題に対し主体的に考え、自ら解決しながら故郷生徒の育成」を使命として掲げている。同校は少人数制の授業が特徴的で、複数の教職員による「ティーム・ティーチング」や習熟度別学習などを実施。また、学習支援員の配置により個々の学習状況に応じたキメ細かな指導に定評がある。2年次からは、幅広い進路希望に対応した科目選択が可能となるカリキュラムを編成。3年次には、特色のある選択科目として、「地域と自然」「地域ビジネス」理解」「生涯スポーツ」を設けている。さらに、「総●就職者の9割超は道内へ文部科学省が昨年12月18日に公表した『令和6年度学校基本調査(確定値)』に見る北海道の高校新規卒業就職者の動向が興味深い。発表によると、令和6年3月の北海道の高校新規卒業者は3万4,467人だった。就職を選択した者は6,064人で、卒業者に占める就職者の割合は17.6%だった。うち、道内就職者■北海道外就職者の就職先内訳「豊かなまちを拓き創造す『はなまか』に貢献できる「フードデザイン」「異文化合的な探究の時間」では、3年間を通して郷土「浜中町」の課題について探究していく。身近に感じられる浜中町の魅力や課題を題材として、学ぶことの楽しさや生涯にわたって必要とされる学力を身につけ、次世代の浜中町を担う一員としての自覚と資質を養うことを目指している。進路指導では、「生徒のやる気と可能性を引き出し、自己実現に粘り強く取り組む生徒を育てる」を重点目標に掲げ、「人生観・職業観などを醸成するキャリア教育」や「各種検定試験の取得」などに力を入れて教育活動を展開している。個別生徒が結する進路の実現を目指すキャリア教育において、1年次は「自己理解」として生徒の適応と、仲間と好ましい人間関係を作ることを目標に掲げている。2年次は「自己啓発」数は5,656人で、道外は408人だった。道外就職率は就職者数全体の6.7%を占めてはいるものの、約9割以上は道内での就職を選択している現状があり、北海道の高校新卒就職者は圧倒的に地元の企業を選んでいると言えるだろう。●道外就職者が目指す首都圏道外を選択した者の就職先都道府県を見ると、最上位から順に東京都が162408人として社会を知り、集団内で求められる自己責任や役割を認識してこれを果たしていく。3年次は「自己実現」として社会における役割を考え、適性に合った進路選択を行うことを目標に取り組む。●職場見学で働くイメージを醸成令和7年3月卒業予定生徒のうち、就職希望者について、進路指導部長の山崎徹教諭は「9人が就職希望です。役場や製造業など、目指す分野はバラバラです」と、明かす。就職希望者に対する進路指導の特徴として、「2社以上の職場見学」を挙げる山崎教諭。可能な範囲で複数企業の職場見学に行き、比較・検討を徹底することを生徒に強調する。職場見学は、「求人票だけでは読み取れない職場の雰囲気や環境、生徒自身がその場所で働くだけではなく、その町で住むこともイメージし、実際に肌で感じることが大事」であると位置づけている。人で39.7%、千葉県が63人で15.4%、神奈川県が56人で13.7%となっている。これに、上位第4位の埼玉県の30人(7.4%)を加えると、一都三県の「首都圏」に311人(76.2%)も流入していることが分かる。これ以外では、第5位の愛知県が22人で5.4%、第6位の山口県が13人で3.2%となり、第7位は大阪府が12人(2.9%)とつけた。また、これはある別の調査によるものだが、北海道在住の18〜19歳の若者のうち、男性が「首都圏の企業で就職した理由」として最も多く上がった理由は「キャリア形成や自己成長に有益だと考えたから」が、次点の「高い給与や報酬が期待できたから」の1.5倍以上の開きをもってトップとなっている。同様に、女山崎教諭は令和6年度、「企業説明会」の回数を増加したことに言及し、特に、3年次生徒対象の企業説明会は、多くの企業を招かず少ない企業で実施したと語る。一企業につき一時間ほどの時間を確保し、企業側が落ち着いて話ができる場を用意した。そのためなのだろう、企業は自社の概要説明だけではなく、業界を深掘りした説明や社会人の先輩としての立場からアドバイスなどを行うことができた。生徒にとっても聞きやすく、企業理解を深めることにつながっているとの手応えがある。また、同校では「卒業生講話」として、実際に高校を卒業してから就職した先輩卒業生の体験談や振り返り、近況などを聞く場を用意。年齢が近い者の話は大人から聞くよりもイメージがつきやすく、進路を考える機会として良い刺激になっているという。●企業と構築する情報網・信頼性山崎教諭は、「遠方にある本校のためわざわざ足を運んでいただき、また実際に企業の方々と直接話ができることを非常にありがたく思います」と、感謝の言葉を口にする。ダイレクト性の場合は、「希望する就職先があったから」がトップで、次点には同率で「高い給与や報酬が期待できたから」「地元や親元から離れたかったから」が並んだ。●北海道→山口県の道外就職北海道からの道外就職先で目立ったのは山口県だ。山口県の吸引力の源泉は一体何だろうか。山口県を支える産業として、瀬戸内海沿岸では、大正時代から「造船」「化学」「機械」「金属」などの工場群が進出してきた歴史があり、また、現在では観光資源化された周南市の石油化学コンビナートなど、全国有数の工業県として大きく発展している。「鉄鋼」「石油」「化学製品」などの基礎素材型産業に加えて、輸送用機械の製造も盛んだ。自動車の「マツダ」、鉄道車両の「日立製作所」、造船の「三菱重工業」など大手輸送用機械メーカーが多く揃い、そのにやり取りすることができるため、企業の構えや考え方が分かり、生徒を送り出す意味においても安心感につながることが嬉しい。また、「人を大事にして欲しいと感じます。いまの生徒の特性を見て理解してもらいながら、接していただけたら」と、山崎教諭。例えば、若者は□電話を取る□ということが生活に根づいていないため、入社時は電話の取り方そのものが分からない人も少なくない。一方、スマートフォンなどのIT機器の使い方に苦労する上司や年配者もいるのではないか。良い・悪いではなく、両者とも実際に無縁の世界で生きてきた。お互いがその人の置かれている状況を理解しようとし、尊重しながら働ける環境になることが望みだ。地域密着型の教育を展開し、企業理解を深める進路活動を通して、これからは生徒の確かな未来の実現を支えていく。周辺に関連産業が集積していて、工場で躍動できる若手の人材需要には高いものがある。山口県には「ユニクロ」や「ジーユー」などのファッションブランドを世界中で展開している株式会社ファーストリテイリング(本社・山口市)も拠点を構えている。また、山口県下関市と福岡県北九州市を中心として関門海峡の南北に広がる「関門都市圏」は、「産業」「経済」「文化」など、あらゆる面で結びつきが強く、人的交流も活発だ。自然環境を活かした第一次産業が基幹の北海道も製造業が活発だが、異なるテイストのモノづくりに憧れて山口県に進出しているとの見方もできそうだ。学校基本調査(確定値)第70号キャリア&就職支援ジャーナル高等学校版https://daigakushinbun.com/大阪府12人(2.9%)山口県13人(3.2%)愛知県22人(5.4%)埼玉県30人(7.4%)その他50人(12.3%)東京都162人(39.7%)神奈川県56人(13.7%)千葉県63人(15.4%)(資料: 文部科学省『令和6年度学校基本調査(確定値)』)北海道2025年1月29日(水)JournalʼsEye令和6年3月高校新卒者は3万4,467人道内就職率は9割超、道外は「首都圏」に集中地域社会を形成する力を育む授業地域社会を形成する力を育む授業企業説明会で視野を着実に拡げる企業説明会で視野を着実に拡げる2企業理解を深める進路行事北海道外への就職動向北海道外への北海道北海道

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