キャリア&就職支援ジャーナル_第67号
5/12

(%)(%)60.060.050.050.040.040.030.030.020.020.00.00.0昭昭和和6262年年   63 63年年平平成成元元年年   2 2年年   3 3年年   4 4年年   5 5年年   6 6年年離職率離職率98.297.097.998.396.995.296.097.747.248.746.243.245.141.839.740.329.328.426.527.927.624.325.023.750.348.349.349.595.346.648.147.546.894.548.948.547.993.993.193.393.493.889.993.592.835.836.691.991.991.192.135.492.092.092.992.933.632.536.535.932.034.332.088.234.789.289.289.086.386.797.597.798.098.198.298.198.098.097.397.696.996.696.395.795.893.994.794.896.793.994.444.444.493.293.293.291.891.892.892.891.234.234.240.491.691.639.639.693.640.839.239.539.240.040.991.032.339.337.635.732.232.031.131.030.032.432.431.931.832.828.8   31 31年年令令  和和 322 3年年年年   4 4年年   5 5年年   6 6年年(%)離職率(%)就職率100100大卒97.998.095959090858580808585(3月卒)(3月卒)98.198.098.097.697.997.397.695.8高卒38.436.937.0高卒35.934.931.231.532.3大卒社員→正社員」への転職は、異なる産業類型間よりも同一産業類型内でより多い傾向がある。高校新卒者の18・19歳に留意相対的に低年齢で動く女性入職時の年齢は、教育年数が長い学歴ほど年長に偏ることは当然のことだ。留年や休学などを特に経験することなく卒業した場合の年齢から、どの程度の期間が経過してから転職することが多いのかを出身学歴ごとに見てみると、高校卒は「18・19歳」という卒業直後の年齢が13.9%、そして「20・21歳」が20.1%を占めている。高等専門学校・短大卒も類似の傾向を見せる。これに対して、専門学校卒や大学卒は卒業直後の年齢層である「20・21歳」や「22・23歳」は一割にも満たず、卒業して2年以上経過してから転職する傾向が見受けられる。各学歴における入職年齢の男女差を見ると、高校卒では女性のほうが、専門学校卒や高等専門学校・短大卒では男性のほうが、卒業直後の年齢層で転職する傾向があることが分かった。高校卒人材においては、「18・19歳」では、男性11.7%、女性18.1%。「20・21歳」では、男性19.8%、女性20.5%。「22・23歳」では、男性18.3%、女性20.4%と、いずれの年齢■新規学卒者就職率と就職後3年以内離職率(高校・大学)でも女性のほうが多いということが分かるだろう。また、高等専門学校・短大卒、大学卒でも女性は男性よりも低い年齢で転職する傾向が見られ、特に「28・29歳」に集中している。女性は結婚や出産などのライフイベントを機に転職する人が男性より多いという実態が、比較的若い年齢層での転職が多くなることに少なからず影響しているのだろう。離職率「七・五・三現象」の変化伸びる高校新卒者の定着率調査結果をここまで概観して、自身のキャリアを育てるため、もしくはその環境を改善するために入社から早めに区切りをつける高卒者をはじめとした若者が多いことが分かった。しかし、かねて社会的にも問題視されてきた、就職して3年以内に中学新卒新入社員の7割、高校新卒新入社員の5割、大学新卒新入社員の3割が離職するという「七・五・三現象」には変化の兆しが訪れている。冒頭でも述べたように、10月25日、厚生労働省が公表した「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」によると、令和3年3月に卒業した新規学卒就職者の離職率は、「中学新卒新入社員」が50.5%(前年同期比2.4㌽減)、「高校新卒新入社員」が38.4%(同1.4㌽増)、「大学新卒新入社員」が34.9%(同2.6㌽増)という結果だった。かつての7割・5割・3割からの変化が鮮明だ。特に注目すべきは、高校新卒者のそれで、平成18年3月卒業者の44.4%以降減少に転じ、平成27年3月卒業者の39.3%以来、40%を常に下回り続けており、5割→4割へと定着したように見える。同時に、大学新卒者との差が今回は3.5㌽まで迫っている状況で、これまでこれほどまでに接近したケースはない初めての現象だ。非正規雇用から正社員へのキャリア形成を果たす若者学校卒業直後の若者が非正規雇用に多く就くようになったのは1990年代後半以降のことだ。非正規雇用の若者の増加は、2000年代に入ると「フリーター問題」として広く認知され、正社員への転職支援は長らく講じられてきた。しかし、非正規雇用から正社員に転じたとしても、学校卒業後すぐに正社員になった同年齢層に比べると、その賃金水準は平均的には低いということが、労働政策研究・研修機構の調査で明らかになっている。また、一旦正社員になったとしても短期で離職し再び非正規雇用に就くことも少なくないという。非正規雇用の若者にとっても重要なのは正社員になることだけではなく、そこからキャリア形成の可能性が高まることだと、同機構は指摘する。『若者の―』によると、非正規雇用から正社員に転職した若者は78,5万人だが、この数は、「正社員→正社員」間での転職者の3分の1弱に過ぎない。正社員として中途採用される若者は正社員からの転職者のほうが圧倒的に多い。非正規雇用から正社員への経路は決して広いわけではないということを念頭に置いておくべきだろう。非正規からの転職者は、性別に着目すると女性のほうがやや多く、学歴別に見ると、高卒者が29.8万人、大卒者が28.9万人(文系19.8万人、理系9.1万人)と多く、割合ではそれぞれ4割弱を占めている。産業別に見ると、高校卒の場合、「従来型サービス」の29.6%が最多だった。以下、「従来型ものづくり」23.4%、「消費者サービス」19.0%、「ビジネスサービス」17.4%、「社会サービス」10.3(「うち大企業・官公営」4.9)%と続いた。正社員として入職した先の事業所において、キャリア形成につながる可能性の高い「従来型ものづくり」「ビジネスサービス」「社会サービス」の3つに注目してみると、これら3類型への転職者は合計37.9万人(男性19.1万人、女性18.8万人)であり、非正規から正社員に転じた若年全体の48.2%にあたる。男性は51.3%、女性は45.5%で、男性のほうがよりキャリア形成につながる可能性の高い産業領域に転入していることがうかがわれる。そのほかいくつか特徴的な傾向を整理・把握しておくと、まず全体としては、正社員として転入した先は「従来型サービス」が最も多いということだろう。特に、男性の非大卒層や女性の高卒、ならびに大卒(文・理とも)で多いことが分かった。この類型における労働力需要は大幅な縮小傾向にあり、将来的な問題があるとされる。また、雇用の質の問題が指摘されている「消費者サービス」についても、やはり高卒男女、専門学校卒男女、文系大卒女性では入職者が多い。この産業は、技能水準が相対的に高くはなく、労働集約的対人サービスの仕事が多いことから参入が比較的容易であるとされ、大卒等と比べると専門的な学びが相対的に少ない高校卒でも入職しやすいこととも無関係とはいかなそうだ。多様なキャリア形成の選択肢初職での生涯キャリアも展望ここまで見てきて分かったのは、高校卒をはじめとする非大卒の若者は、大卒以上の学歴者と比べると、より良いキャリア形成環境を望める「従来型ものづくり」「ビジネスサービス」「社会サービス」の3つの産業類型への転職比率は、労働市場において競争力が相対的に低い傾向にあるらしいということだ。また、若者が転職をする場合、学歴によって離職および転職先への入職年齢に特徴的な違いが出ることが分かった。特に、高校卒は卒業から2〜5年のうちに転職し、次の事業所へ入職する傾向が強い。これは、東京労働局による別の調査だが、令和4年3月に卒業した高校新卒就職者の初入職先の離職理由は、「仕事が合わない」が最も多かった。この傾向はここ数年間ずっと続いており看過はできない。応募前職場見学を活用しての職業理解や職業意識形成が十分に機能しないまま就職してしまったことが要因の一つなのだろう。しかしながら、先にも述べた通り、かつて「七・五・三現象」と呼ばれていた離職率は、近年では高卒に限っては4割にまで下がってきている。就職指導にあたる高校教員の不断の努力の賜物であり、生徒の職業研究等なども含めて、ミスマッチを防ぐ取り組みが奏功していると言うこともできるに違いない。若者がより良いキャリアを形成するための一手段として、確かに転職も一定の効果をもたらすに違いない。しかし重要なのは、就職志望を持つ高校生は、就職活動時にしっかりとした企業・業界研究行い、インターンシップや応募前職場見学でその事業所や業務内容と自分の能力や希望がマッチするかどうかの的確な判断をすることだろう。そして事業所側は、研修プログラムや教育体制を整え若者がキャリアを形成できる職場環境を整える。そうすることで、相互間のミスマッチや早期離職は防ぐことができ、新卒で入社した企業で生涯キャリアを形成していくことも展望できるはずだ。キャリア&就職支援ジャーナル高等学校版第67号https://daigakushinbun.com/離職率 高卒 (左軸)就職率 高卒 (右軸)   7 7年年   8 8年年   9 9年年   10 10年年   11 11年年   12 12年年   13 13年年   14 14年年   15 15年年   16 16年年   17 17年年   18 18年年離職率 大卒 (左軸)就職率 大卒 (右軸)   19 19年年   20 20年年   21 21年年   22 22年年   23 23年年   24 24年年   25 25年年   26 26年年   27 27年年   28 28年年   29 29年年   30 30年年「転職」の新しい価値観 特集52024年10月29日(火)新たな価値観を創出する生き方が働き方を変えていく

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る