キャリア&就職支援ジャーナル_第67号
12/12

 大航海時代に東西貿易の要衝として繁栄した「マラッカ海峡」や、州によって異なる祝日に代表されるように、多様な文化と気風が共存するマレーシア。特に、週末の休日をイスラム教徒にとって重要な金曜日を尊重して金・土としている州と、諸外国とも一致する土・日と定める州が混在している点は興味深い。本稿では、マレーシア現地の教育制度をはじめ、日本の学校法人によるマレーシア現地でのキャンパス新設の動き、また8月17・18日にマレーシアの2都市で、同20日にはシンガポールで開催された「日本留学フェア」の様子をリポートする。8/17ペナン会場ではJASSOの担当者による講演会が行われた8/17ペナン会場ではJASSOの担当者による講演会が行われたマレーシア米山学友会の協力でけん玉などの日本文化体験ブースが設けられたマレーシア米山学友会の協力でけん玉などの日本文化体験ブースが設けられたフェア来場者は日本語学校の担当者と直接対面して留学情報の収集に努めたフェア来場者は日本語学校の担当者と直接対面して留学情報の収集に努めたよる日本文化にふれるブース出展などもあり、来場者にとって有意義な機会となったようだ。フェアの開場前から学生や家族連れの参加者が入場待ちをするなど、参加者の留学への関心も高く、活気あふれるフェアとなった。20日、シンガポールにある日本語学校のIkoma Language Schoolで実施された「日本留学フェア in シンガポール」には、同校の生徒を中心に30人が訪れた。同校は1996年にシンガポール教育省の認可のもと設立された日本語中等教育は前期と後期に分かれる仕組みとなっており、中等教育以降は私立学校を除いてマレー語が一律教育言語となる。また、公的な中等教育機関に併走する形で、独自カリキュラムのもと中国語で授業を行う「華文独立中学」と呼ばれる6年制の私立中等学校が存在するという教育体系もまた大きな特徴の一つだ。同基金が昨年3月31日に公表した『2021年度海外日本語教育機関調査報告書』によると、2021年度時点のマレーシアの日本語学習者数は3万8,129人。18年度実施の前回調査と比較して1,118人(2.8%)減ったものの、世界の国・地域別第10位を維持した。就職相談ブースも設けられた8/18クアラルンプール会場就職相談ブースも設けられた8/18クアラルンプール会場に関する直近の注目トピックスとして、日本の学校法人がマレーシア現地に続々とキャンパスを設置している動きを紹介したい。22年6月に開校したのは、日本デザイナー学院マレーシア校(マレーシア・セランゴール州)だ。同校のマンガ・イラストレーション学科では、マンガ・イラスト分野の教育を日本・マレーシア両国の文化を取り入れた実践的なカリキュラムで学ぶ。マンガやアニメーション、イラストなどの分野で活躍できるクリエイターの育成を目標としている。24年9月には、筑波大学マレーシア校(マレーシア・クアラルンプール市)が13人の入学生を迎えて開校した。同校に設置された学際サイエンス・デザイン専門学群では、文系・理系に偏らない学際的な課題解決型授業を中心とする教育を目指す。実際に、データサイエンスを基軸として、自然科学・人文社会科学の考え方・技術を広く環境・社会問題等に適用し、デザイン思考を踏まえつつ創造的に地球規模の課題解決に貢献する人材の育成を図るという。また、授業は英語と日本語のほか、一部マレーシア高等教育省が定める指定科目については、マレー語により実施する。さらに、マレーシア政府からの要望である「日本文化や日本型の職業倫理、価値観の涵養」を踏まえ、体育の授業では柔道や剣道といった武道の実技も行われる。卒業後は、日本・マレーシアの大学院進学をはじめ、日本やマレーシア国内の企業等への就職を想定。海外で初めて日本の学位を授与する大学となり、日本・マレーシア双方の価値観を尊重する場として機能することが期待されている。初日となった17日に、Jen Penang Georgetown by Shangri-La(マレーシア・ペナン州)で開催された「日本留学フェア in マレーシア」のペナン会場には、153人の来場があった。マレーシア米山学友会の協力で文化体験ブースが設けられたほか、日本で外国人留学生支援事業などを手がける独立行政法人日本学生支援機構(JASSO、本部・横浜市)の担当者による講演会やラ社による留学・就職相談も充実し、来場者から好評を得た。二日目となった18日、Pullman Kuala Lumpur City Centre Hotel & Residences(マレーシア・クアラルンプール市)で開かれた「日本留学フェア in マレーシア」のクアラルンプール会場には、241人が足を運んだ(後援:JASSO、国際交流基金)。JASSOや在マレーシア日本国大使館の担当者などによる講演会がそれぞれ行われたほか、国際交流基金に学校で、日本語学習者が数多く在籍している。マレーシアとも地理的に近いことから、今回のフェアの開催に至った。フェア全体を通して日本の文化や教育に対する興味が強く、アニメーションやサブカルチャーに関連する専門学校のコースや英語で学位を取得できる日本国内の大学などについて、質問が多くあった。なお、来年3月7日にはペナン会場で、8日にはクアラルンプール会場で、10日にはシンガポール会場で同じく対面形式の日本留学フェアを開催予定だ。キャリア&就職支援ジャーナル高等学校版グローバル・ニュース2024年10月29日(火)日本・マレーシアの学校教育制度(概略)マレーシア日 本3初等教育国民学校(6年間)初等教育小学校(6年間)* 外務省・文部科学省の発表資料などをもとに編集局で作成。いずれも複数存在する学校系統・ルートの中から代表的なものを抜粋しているため、修業年限や接続の仕方など、これによらないものがある場合も。また、所定の学校卒業・修了、指定単位の修得等を基礎資格として実現する他の学校等への編入学については基本的に割愛。なお、海外諸国・地域に関しては、現地の制度変更等により、ここに示す情報と最新の状況が異なる可能性がある中等教育前期中等学校(3年間)中等教育中学校(3年間)高等学校(3年間)カレッジポリテクニク後期中等学校中等技術学校(2年間)(1〜3年間)準備教育課程(2年間)1212131415161718(2〜3年間)(1〜4年間)大学(3〜5年間)192021222324(歳)大学(4〜6年間)短期大学専門学校第67号https://daigakushinbun.com/学年1234561231234567678921456123123123456年齢1011学年日本のサブカルチャーに人気対面式の「日本留学フェア」進路情報研究センター・ライセンスアカデミー(本社東京・新宿区)は8月17・18日にマレーシアの日本留学希望者を対象とする「日本留学フェア in マレーシア」を、20日に隣接するシンガポールの日本留学希望者を対象とする「日本留学フェア in シンガポール」を開催した。いずれも、参加校ごとに、来場者が自由に移動する個別相談形式で進行した。12対面式日本語学習者数は世界第10位多民族国家を象徴する言語空間国際交流基金(本部東京・新宿区)によると、マレーシアの教育制度は初等教育6年間、中等教育5年間の「6-5制」となっている。初等教育における教育言語はマレー語、中国語、インド系のタミール語など多岐にわたるが、いずれの教育機関においてもマレー語は必修教科で、英語も広く用いられる。日本の学校法人が意欲的に進出筑波大学マレーシア校が開校マレーシアの日本語教育マレーシアの教育トピックスvol.5「日本留学フェア」、マレーシア「日本留学フェア」、マレーシア&&シンガポール多様な文化が共存するマレーシア人材育成を通して深める相互理解シンガポールでで活況活況

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る